阪神が新外国人ヤンハービス・ソラーテを獲得!
表記がヤンガービス・ソラーテだったり、ヤンゲルビス・ソラルテだったりと……カタカナ表記にすると本当にややこしい。
最終的な報道はヤンハービス・ソラーテに統一されたようなので本ブログでもそちらに合わせた。
阪神がヤンハービス・ソラーテ内野手(32)と選手契約を締結したことを7日、発表した。ベネズエラ出身のソラーテは、両打ちの内野手。メジャー通算670試合で打率・258、75本塁打、307打点を記録している。主に三塁手としてプレーしてきたが、二塁や遊撃も守れ、外野の守備も可能なユーティリティー。【全文はデイリーで】
今回は「ヤンハービス・ソラーテ」の成績や特徴についてまとめていく。
ヤンハービス・ソラーテ (Yangervis Solarte) 基本情報
守 | 投/打 | 歳(生年月日) | 身長/体重 | 所属 |
内・外 | 右/両 | 36歳(1986/07/07) | 180/93 | マーリンズ傘下 |
成績 | ||||
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14年以降は、ほぼメジャーに在籍していたこともあり、マイナー成績は今年の物のみ抜き出した。
選手経歴
- 【2005年】アマチュアFA選手としてミネソタ・ツインズと契約
- 【2009年】初の2A昇格。右肩手術で16試合(ルーキー~2A)のみの出場に留まる
- 【2011年】2Aで121試合、打率.329、7本塁打の成績を残す。オフにFAに
- 【11年オフ】テキサス・レンジャーズとマイナー契約(スプリングトレーニング招待)
- 【2012年】3Aで1シーズン。130試合、打率.288、11本塁打の成績を残す。オフにFA
- 【12年オフ】再度レンジャーズとマイナー契約(スプリングトレーニング招待)
- 【2013年】3Aで1シーズン。133試合、打率.276、12本塁打の成績を残す。オフにFA
- 【2014年】ニューヨーク・ヤンキースとマイナー契約(スプリングトレーニング招待)
- 【14年4月2日】初のメジャー昇格。同日、メジャーデビュー
- 【14年7月】サンディエゴ・パドレスへトレード
- 【14年】2チームで131試合、打率.260、10本塁打
- 【2015年】開幕ロースター。152試合、打率.270、14本塁打
- 【2016年】開幕ロースターも4月に右ハムストリングスを痛め、5月後半まで離脱
- 【16年】109試合、打率.286、15本塁打
- 【2017年】WBCベネズエラ代表
- 【17年】128試合、打率.255、18本塁打
- 【2018年】トロント・ブルージェイズへトレード
- 【18年】122試合、打率.226、17本塁打。オフにFA
- 【2019年】サンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約(スプリングトレーニング招待)
- 【19年】開幕ロースターに入るが、28試合、打率.205、1本塁打と奮わず、5月にDFA
- 【19年】マイアミ・マーリンズとマイナー契約
- 【19年】マーリンズと契約解除
- 【19年7月】阪神タイガースとの契約合意発表
ヤンハービス・ソラーテ (Yangervis Solarte) プレー動画
ヤンハービス・ソラーテのまとめ動画。
19年のホームラン集にはじまり、18年ホームラン集、19年ヒット集、18年打席集、守備動画となっている。
パワー・技術と高いレベルで揃えた印象。
NPB球団がヤンガービス•ソラーテ(32)と契約予定。MLBで昨季まで5年連続二桁HRを放った強打のスイッチヒッター。このパワーに併せ、直球変化球共に空振りが少ない通算12.7K%のコンタクトスキルと、3B,2B,1B,SS,LF,RFと内外野複数守るユーティリティ性が武器。今季は不調で6月中旬にAAAに降格していた。 pic.twitter.com/fLsVtqWNE1
— NPB外国人選手好きのtweet (@CPMMAF) July 3, 2019
もはや説明不要。NPB外国人選手好きさんのツイート動画。
テンポよくカッコいい動画に仕上がっていますのでぜひ。
.@Solarte26 = Pelotero y bailarín. ??⚾️#SFGigantes pic.twitter.com/mrxWp4EzSh
— SF Gigantes (@SFGigantes) April 20, 2019
ヤンハービス・ソラーテ (Yangervis Solarte) 守備・走力
守備について
《守備経験》(上からメジャー経験の多い順に)
※M=メジャー/Mi=マイナー/Inn=イニング |
《守備指標》
|
内外野どこでも守るユーティリティ。プロ入り当初は二・三塁で始まり、二年目からは遊撃とレフト・ライトが加わった。(ライトは07,08のみの出場で、その後は経験無し)
一塁は最も遅く、12年から。現在も就く守備位置の中ではマイナー経験含めて最も経験が浅い。
メジャーでのメインは三塁、次いで二塁。評価は二塁手としての方が高い。
守備指標の数字を見る限り、守備範囲はイマイチ(特に18年に大きく下降)で二塁・三塁の慣れたポジション以外では粗い部分も多い。一方で併殺能力には優れており、器用さや守備センスといったものを感じる数字になっている(だからこそユーティリティとして重用されてきたのだろう)。
ちなみに今年セ・リーグにやってきた助っ人選手の数字を例に出すと、マルテが三塁の【UZR=3.0 UZR/150 11.7】一塁は【UZR=-3.9 UZR/150=-5.1】。巨人のビヤヌエバは三塁【UZR=-2.5 UZR/150=-4.1】。
また、通算の数字は良いと言い切れないレフトの守備指標だが、メジャーデビューとなった14年に40イニングで【UZR=-1 UZR/150=-50.1】を記録し、その後今年19年まで機会が無かった事が大きな理由。今年久しぶりにレフトの守備に就き(42.2イニング)【UZR=0.5 UZR/150=9.8】の数字を残している。
以上の事を踏まえると、日本ではユーティリティとして過剰な期待は禁物ではあるが、ニ・三・レフトといったあたりでの起用であれば非常に楽しみな選手。
一塁については、あまり優れた部分が見受けられず、あくまでオプションといった扱いが良いだろう。
走力について
年度 | Ft/s(m/s) | 順位(MLB) |
2019 | 25.4(7.74) | 404 |
2018 | 24.7(7.53) | 528 |
2017 | 24.7(7.53) | 532 |
2016 | 25.0(7.62) | 506 |
2015 | 25.4(7.74) | 477 |
これだけでは想像し難いと思われるので、以下に今期NPBに加入した選手の記録を
選手(年度) | 球団 | Ft/s | 順位(MLB) |
J.マルテ(2018) | 阪神 | 26.7 | 346 |
C.ビヤヌエバ(2018) | 巨人 | 25.7 | 452 |
J.ブラッシュ(2018) | 楽天 | 27.2 | – |
K.バルガス(2017) | ロッテ | 25.2 | – |
つまり、走力はなかなかに厳しい。
左右打席別の成績
スイッチヒッターということで、左右別の細かい数字を
右打席
年 | 打席 | 打数 | 率 | 安 | ニ | 三 | 本 | 四 | 振 | OPS | ISO |
2014 | 184 | 165 | .291 | 48 | 11 | 1 | 3 | 11 | 23 | .765 | .133 |
2015 | 130 | 120 | .242 | 29 | 7 | 0 | 3 | 8 | 12 | .667 | .133 |
2016 | 105 | 96 | .271 | 26 | 8 | 0 | 3 | 8 | 17 | .772 | .177 |
2017 | 142 | 128 | .211 | 27 | 4 | 0 | 2 | 10 | 15 | .564 | .078 |
2018 | 172 | 160 | .225 | 36 | 7 | 0 | 8 | 10 | 19 | .692 | .194 |
2019 | 37 | 34 | .176 | 6 | 1 | 0 | 0 | 2 | 4 | .428 | .029 |
通算 | 770 | 703 | .245 | 172 | 38 | 1 | 19 | 49 | 90 | .680 | .138 |
右打席通算のBB%(6.4%)、K%(11.7%)
左打席
年 | 打席 | 打数 | 率 | 安 | ニ | 三 | 本 | 四 | 振 | OPS | ISO |
2014 | 351 | 304 | .243 | 74 | 8 | 0 | 7 | 42 | 35 | .673 | .095 |
2015 | 441 | 406 | .278 | 113 | 26 | 4 | 11 | 26 | 44 | .771 | .165 |
2016 | 338 | 309 | .291 | 90 | 18 | 1 | 12 | 22 | 46 | .819 | .181 |
2017 | 370 | 338 | .272 | 92 | 17 | 0 | 16 | 27 | 46 | .794 | .192 |
2018 | 334 | 308 | .227 | 70 | 13 | 0 | 9 | 21 | 53 | .636 | .130 |
2019 | 39 | 23 | .231 | 9 | 4 | 0 | 1 | 2 | 12 | .679 | .179 |
通算 | 1875 | 1704 | .268 | 448 | 86 | 5 | 56 | 140 | 236 | .741 | .155 |
左打席通算のBB%(7.5%)、K%(12.6%)
左右打席まとめ
基本的には、右より左。
通算では左打席は4シーム、2シームといった速球に強く、右打席では左打席程4シームへの強さを見せないものの、2シームやカッターといった速く小さな変化への対応力は左以上。
だが、18年は左打席での速球への対応に苦戦(2017(4シーム)打率.331→2018 .238)したことと右打席での長打力増加により、相対的に右打席が優勢となった。
また、左右ともにチェンジアップやカーブといったボールを苦手としている。
ポジティブな特徴
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アプローチが良く、パワーも備えた好打者
通算のBB%は7.1%と平均より多少低いが、ストライクゾーンのコンタクト率93.1%、ボールゾーンコンタクト率75.7%とコンタクト力に優れ、そのためK%が12.3%と非常に優秀な数字を記録している(リーグK%平均は20-23%程度)。
また、打球方向や角度に大きな偏りは無く、シフトによる結果への影響もほぼ見られない。
かといってパワーが物足りないかと言えばそんなこともなく、14年から18年まで5年連続で2桁本塁打を記録し、18年には459Ft(約140m)弾を放ちMLBで年間23位の飛距離も記録した。
各種成績からは、技術とパワーを兼ね備えた好打者だと考えられる。
速球に強く、変化球対応もそれなり
4シームや2シームといった速球への通算打率は、それぞれ.286(4シーム)、.290(2シーム)と高い数字を記録し、カットについても打率.285となっている。
打撃が粗く、対応が厳しかったとされるような選手の多くが手こずるスライダーやスプリットについての対応も悪くなく、目立って苦手とされるのがチェンジアップとカーブ。
そのチェンジアップとカーブにしても、通算打率は2割を超えており、多くの助っ人選手に比べれば上々(例えばマルテはチェンジアップ・スライダー・カットに対しての打率が1割台であった)。
チーム状況に合わせて出場可能なユーティリティ
前の項目でも触れているが、とにかく守備経験が豊富な選手。
(ほぼ)経験が無いのは投手・捕手・センターくらいのもので、チーム状況に合わせた起用に応えられる非常に使い勝手の良いユーティリティである。
とはいっても特別上手い守備の人という扱いではなく、あくまで打力優先でのオプション的な扱いであり、スタメン起用での編成に幅が持てるといった部分がメリットとなりそうだ。
ネガティブな特徴
近年の成績は下降気味
17年以降、本塁打数は伸びを見せたが全体的な成績は下降線を辿っている。
(今期3A成績は良好)
ここでは詳細については触れないが、精神的なダメージもあったのかもしれない。が、一先ずは数字によって判断するしか無いので、成績悪化にリンクしそうな物を2項目ピックアップしていく。
4シームへの対応悪化
4シームへの対応が年々悪化している。
4シームに対しての打率を表にしたものが以下
年度(球数) | 右打率 | 左打率 | 通算 |
2014(667) | .359 | .211 | .261 |
2015(666) | .250 | .349 | .325 |
2016(540) | .225 | .330 | .291 |
2017(662) | .137 | .331 | .268 |
2018(639) | .298 | .238 | .257 |
2019(35) | .214 | .333 | .269 |
19年はサンプルが少なく参考値程度。
左右の違いはあるが、17年から4シームへの強さがブレている。
また、4シームに対するゴロ確率は16年(30.84%)→17年(37.65%)→18年(34.18%)となっており、少しゴロが増加している傾向にあった。
4シームへの対応は、ソラーテの最も大きな強みでも有り、ここが良化してくるかどうかはポイントになりそうだ。
ボールゾーンスイング率の上昇
ボールゾーンスイング率が2014年から
28.6%→32.0%→35.8%→34.5%→41.4%→38.6%と増加傾向(最後の19年はサンプル少)。なお、コンタクト率についてはほぼ横ばい。
スイング率の上昇は一概に悪いとも言えないのだが、なまじ高いコンタクト率を誇っているため、ボールゾーンを当てることによる凡打の増加は成績悪化原因の一つと考えられる。
ゾーン別の打率傾向などを見ても同様の結果を示しているため、一種のアプローチ悪化と言えるだろう。
なお、ゾーン別の打率傾向ではストライクゾーン内であれば左打席はほぼ良好だが、唯一インハイだけは全く打てていない。右打席については少し粗い。
一般的にシーズン途中の加入は難しい
保有権の問題もあって、そもそも獲得リストが厳しい部分は脇に置いたとしても、一般的にシーズン途中加入での活躍は難しい。
キャンプ期間が無く、タイムリミットは3-4ヶ月と短い事もあって調整に大きな時間はかけられない。最初の印象が大事な助っ人選手にとってこのハードルは高く、ましてや野手ともなればそのハードルはさらに上がるだろう。
近年で見ると、NPB経験有りの出戻り以外では広島・エルドレッドや西武・メヒア、キューバ組のデスパイネくらいしか成功例が思い浮かばない。
しかし、近年下降気味とはいってもNPBにやってくる他助っ人選手と比較すれば、まだまだ相対的にはアプローチが良好で速球に強い、大外れの危険性は少ないタイプ。短い準備時間でアジャストしてくる可能性もそこそこ有るのではないかとも考えられる。
ヤンハービス・ソラーテ (Yangervis Solarte) まとめ
シーズン途中加入、近年の成績が下降気味でフレッシュ感が薄いといったトレンド的な部分を無視すれば、NPBに例年やってくる助っ人選手の中でも上位の実力を感じる。
守備位置にある程度自由が利きそうだというのも魅力的だ。
先に獲得したジェフリー・マルテで補いきれなかった長打という部分を埋めるピースになってくれる可能性は高いだろう。
といっても、一人でバンバン本塁打を量産するようなタイプでもないので、あくまで併用してこそ。併用について不安があるとすれば、高いコンタクト率そのままに悪化している打率……つまり、凡打を量産している状況。それにあわせて走力に不安があるため、同じくコンタクト率に優れゴロ確率の高いマルテと組み合わせることによる打線のタンパク化が懸念される。
それぞれ打線のどこに置くかなど、そういった部分もポイントとなりそうだ。
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