「この時期は投手有利~」説は本当か否かというテーマの後編です。
前編は↓↓

概要は前回のブログを読んでいただくとして、今回は過去のデータを使って考察していきます。
それでは続きをどうぞ
近々の3年間と20年前を比較
前回、近々3年間の開幕直後の平均得点とシーズンでの平均得点を比較しましたが、それほど大きな差を見ることはできませんでした。
元々、投手有利という説の根拠に一定の理はありそうだけど、近年の機器や施設の発達、海外自主トレといった要素がその理を埋めるのでは?と考えたところから今回のテーマは始まっています。
つまり、最近の結果と昔の結果を比較すれば、もう少し見えてくるものがあるのでは!?
と言っても、前回同様得点だけで見るのは芸がありません。
てことで20年前、1999年からの三年間と近々の三年間の得点・安打・三振・本塁打について比較してみました。
得点比較
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2018 | 4.32 | 3.83 | ▼11.2 |
2017 | 4.00 | 4.26 | △5.3 |
2016 | 4.01 | 4.31 | △7.5 |
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2001 | 4.42 | 4.53 | △2.4 |
2000 | 4.50 | 4.42 | ▼1.9 |
1999 | 4.35 | 4.17 | ▼4.3 |
18年の「-11%」が引っかかり、なんとも評価が難しい。
一旦保留として他の数字を
安打数比較
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2018 | 8.66 | 8.06 | ▼6.9 |
2017 | 8.37 | 8.47 | △1.2 |
2016 | 8.62 | 8.90 | △3.3 |
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2001 | 8.85 | 8.49 | ▼4.1 |
2000 | 8.83 | 8.46 | ▼4.2 |
1999 | 8.85 | 8.78 | ▼0.8 |
得点比較も踏まえて安打数での比較を見ると、近年開幕直後の打者成績は年平均と比較して高い水準をキープしているようにも思える。
しかし18年の低い値を見ると偶々とも……。
本塁打数比較
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2018 | 0.98 | 0.79 | ▼19.2 |
2017 | 0.87 | 0.67 | ▼23.7 |
2016 | 0.78 | 0.46 | ▼41.3 |
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2001 | 1.07 | 0.89 | ▼17.1 |
2000 | 0.96 | 1.15 | △19.6 |
1999 | 0.97 | 0.92 | ▼5.4 |
サンプル数がぐっと少なくなる本塁打では、大きなバラツキが出た。
また、これまでと一転して近々の三年間の数字が酷く悪い。
この時点で、企画倒れの気配が漂い心が折れかけたが、もう少し見ていこう。
三振数比較
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2018 | 7.27 | 7.21 | △0.8 |
2017 | 7.37 | 7.38 | ▼0.01 |
2016 | 7.03 | 6.67 | △5.1 |
シーズン | 年平均 | 開幕平均 | 差(%) |
2001 | 6.48 | 6.54 | ▼0.9 |
2000 | 6.43 | 6.79 | ▼5.7 |
1999 | 6.30 | 6.08 | △3.4 |
投手指標の奪三振にすれば良かったのだが、そこまで頭が回らず三振数の比較。
マイナス要素の三振数であるから減った場合を△、増えた場合を▼で表記している。
本塁打の比較で、やはり投手有利は真実かとも思ったが、また微妙に……
20年前との比較まとめ
本塁打の数字を抜きにすれば、開幕直後とシーズン全体での差は僅かな物ですね。
5%程度の増減を誤差と捉えるか、それとも確かな差と捉えるかでまた変わってきそうですが……
少なくとも毎年プラスに振れたりマイナスに振れたりしている時点で昔は「春先投手有利」だったが、今はそうでもないんじゃ……?という疑問の答えは出ず。
それよりも、そもそも投手有利説自体怪しい。と振り出しに戻ってしまいました。
過去20年間の得点を比較
打率、長打率、失策数など他の様々な数字について比較してみるのもいいかなと思ったのですが、ここは基本に立ち返りデータサンプルを増やしてみます。
20年ズラッと平均得点を比較すればなにか見えるかも!
決して細かい数字を集めるのが面倒になったわけではありません。
では、その数字を以下に
過去20年間の得点比較(表)
年平均 | 開幕平均 | 差(%) | |
2018 | 4.3 | 3.8 | ▼11.2 |
2017 | 4.0 | 4.2 | △5.3 |
2016 | 4.0 | 4.3 | △7.5 |
2015 | 3.8 | 4.0 | △5.2 |
2014 | 4.1 | 4.4 | △8.0 |
2013 | 4.0 | 3.7 | ▼7.4 |
2012 | 3.3 | 2.9 | ▼10.9 |
2011 | 3.3 | 4.0 | △22.1 |
2010 | 4.4 | 4.3 | ▼1.6 |
2009 | 4.1 | 4.8 | △16.4 |
2008 | 4.1 | 3.4 | ▼16.7 |
2007 | 4.0 | 3.4 | ▼14.5 |
2006 | 4.0 | 4.1 | △2.8 |
2005 | 4.4 | 5.2 | △17.3 |
2004 | 4.9 | 5.1 | △3.5 |
2003 | 4.8 | 4.0 | ▼17.0 |
2002 | 4.0 | 3.8 | ▼4.9 |
2001 | 4.4 | 4.5 | △2.4 |
2000 | 4.5 | 4.4 | ▼1.9 |
1999 | 4.4 | 4.2 | ▼4.3 |
過去20年間の得点比較(グラフ1)
感覚的にわかるようにグラフ化。
年平均を青、開幕直後の平均を赤で記した。
過去20年間の得点比較(グラフ2)
開幕平均が年平均に比べ何%の差があるかをグラフ化。
得点比較まとめ
やはり年によってバラツキがあり、得点だけで見れば開幕直後であっても投手有利といった傾向は見らません。
また、開幕直後とシーズン平均の比率を全て合計すると20年間で0となり、綺麗に収束してしまいました。
まぁ0という綺麗すぎる着地はただの偶然でしょう。
過去20年間の本塁打を比較
さて、これで春先の「投手有利説」は眉唾で、気にする程の必要は無いと結論づけてしまってもいいのですが、一つ大きな問題があります。
とんでもない差異の出た本塁打です。
サンプルが少なくなるから~と無視してしまってもいいのですが、気になりますよね。
ということで、そっちも20年分ズラッと
過去20年間の本塁打比較(表)
年平均 | 開幕平均 | 差(%) | |
2018 | 0.98 | 0.79 | ▼19.19 |
2017 | 0.87 | 0.67 | ▼23.73 |
2016 | 0.78 | 0.46 | ▼41.35 |
2015 | 0.71 | 0.58 | ▼17.82 |
2014 | 0.79 | 0.82 | △4.04 |
2013 | 0.76 | 0.53 | ▼30.43 |
2012 | 0.51 | 0.36 | ▼29.17 |
2011 | 0.54 | 0.89 | △63.58 |
2010 | 0.93 | 0.86 | ▼7.29 |
2009 | 0.89 | 1.13 | △26.73 |
2008 | 0.86 | 0.69 | ▼18.92 |
2007 | 0.84 | 0.85 | △0.27 |
2006 | 0.86 | 0.88 | △1.89 |
2005 | 1.03 | 1.07 | △3.58 |
2004 | 1.23 | 1.26 | △3.06 |
2003 | 1.18 | 1.00 | ▼15.45 |
2002 | 1.01 | 1.06 | △4.62 |
2001 | 1.07 | 0.89 | ▼17.13 |
2000 | 0.96 | 1.15 | △19.61 |
1999 | 0.97 | 0.92 | ▼5.35 |
過去20年間の本塁打比較(グラフ1)
一試合チーム平均本塁打数もグラフ化。
年平均を青、開幕直後の平均を赤で記した。
過去20年間の本塁打比較(グラフ2)
開幕平均が年平均に比べ何%の差があるかをグラフ化。
本塁打比較まとめ
2007年までは非常に緩やかな結果を示していましたが、2011年に急騰した後、2012年からは低水準を連発しています。
そう……2011年なんですよ。
統一球に関して詳しいことは各自調べていただくとして、11年の春先も下がるならともかく急騰してるのはどう考えてもおかしくない?と思われた方もいるでしょう。
開幕直後は前年のボール混ざってたんでない?ってのが私の予想。実際その在庫処理の問題で、すったもんだが13年にあったわけですし。
そして調整云々にボールへのアジャストが加わり、その新しい要素で春先に必要な調整期間が伸びたのが12年。
13年もボールが変わり、同様の理由……もしくは、オープン戦で処理したと言ってたボールがシーズン直後も残っていた可能性もあります。
この辺りの話を始めるとテーマがブレてしまうので、12-14年は一旦無視しましょう。
さて、問題はそれ以降ですね。14年に一度平均水準に戻り、そこから再度低水準を連発。
正直、ここだけ見てしまえば春の投手有利は本当と言ってしまいそうです。
少し脱線気味ですが、ここで新たな表を
セ・パ開幕直後の本塁打比率
シーズン | セ・リーグ | パ・リーグ |
2016 | ▼16% | ▼70% |
2017 | ▼14% | ▼33% |
2018 | ▼13% | ▼25% |
これはセ・リーグとパ・リーグそれぞれ、開幕6試合のチーム1試合平均本塁打が年間のチーム一試合平均本塁打とどれくらい差があったのかという表。
ここ3年、セ・リーグに比べ、パ・リーグは春先の出足が非常に鈍いと言えます。
本塁打はサンプルが少なく、開幕6試合くらいだとブレ幅が大きいのは確かですが、これだけ大きな差が3年続けてセパで見られる事もあまりありません。
で、このセ・パでの違いに一つまた新たな要素が思い浮かびます。
フライボール革命についても概要は各自でお願いします。
この言葉がMLBで定着したのは2017シーズンですが、それ以前2015年辺りからその傾向は出ていました。
となれば、MLBフリークな選手であれば早くから取り入れていたとしてもおかしく無いでしょう。
個人的なイメージですが、パの選手がそういった物を多く取り入れる傾向にある気がします。
つまり、新しい要素が生まれる毎に調整期間が伸び、ある程度繰り返されることでその差異は無視できるものになる(少なくとも開幕までには)と
そう考えると、今年パ・リーグで春から本塁打が急増しているのも説明がつくかもしれません。
まぁ仮定に仮定を重ねていますから、穴だらけではありますが……
ただ、そういったトレンドの繰り返しが春先の投高打低もしくは打高投低として現れてくるのではないか、というのが私個人の結論となります。
【まとめ】春先の投手有利は本当か?
長くなりましたが最終的なまとめと行きましょう。
テーマである「春先の投手有利は本当か?」については、少なくとも開幕してしまえば無視されるレベルであると考えます。
ただし、投手・打者のトレンドまたは外的な要因によって打撃へのアプローチが変わると大きく投手有利な状況も生まれそうです。
また、そういった要素がある程度落ち着いたシーズンでは打者有利な状況が生まれることも予想され
さらに、前編で載せたノーヒットノーラン達成月等も合わせて考えますと、投手が仕上がり切る段階(5月頃?)では一定期間投手有利な状況が生まれているとも考えられます。
つまり、投手が仕上がってから打者は準備が出来るという根拠には、一定の信頼度がありそうです。
結局は個々の選手次第というのが真理で、そこに前述している様々な要素が入っている感じでしょうか。
打率や長打率といった他の様々な要素や、もう少し期間を拡大するなり月別を比較するなりすればまた新しい物も見えて来そうですね。
これだけでもアホ程時間かかったので私はやりませんが……興味のある方はぜひ!
少なくとも「この時期は投手有利ですから~」を何も考えず発言するのはNG!ってことで今回は終わりです。
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