かなり時間が空いてしまい、既に大半の興味は失われてしまいましたが、ようやくリクエスト制度の行方/後編【2019リクエスト事件簿その2】です。
もうこのままフェードアウトしてしまうことも考えましたが、やり始めたものは一応完結させておきたい。
まぁその間に審議拒否って火種が追加で出てきたりして、完結するのはいつのことやら……
出来る限り早急に完結させようとは思っていますので、お時間の有る方、お付き合いいただければ幸いです。
※今回は「前・中・後」と三回に分け、それぞれ以下の様な形でお送りします。
- 【前】リクエスト制度の概要【2019年版】
- 【中】リクエスト事件簿1【よそ見】
- 【後】リクエスト事件簿2【併殺崩し】(当記事)
- 【番外編】リクエスト制度のハードルを上げすぎてしまった件
【併殺崩し】事件概要
- 日時:4月21日(日)
- 対戦カード:阪神-巨人(6回戦)
- 球場:甲子園
- イニング:4回表(無死一塁)
実際の映像とテキスト概要
阪神 0-1 巨人 甲子園 2019/4/21
4回表 ダブルエラーとボールデッドで1点先制される
不運!ビヤヌエバがセーフのポーズが守備妨害をとってもらえずhttps://t.co/S5k40QNAzm#hanshin #ダブルエラー pic.twitter.com/7nhpIWxNOX— 阪神好き (@bhm775) April 21, 2019
- 4回表無死一塁、巨人の攻撃
- 岡本が遊ゴロ
- 阪神側は併殺を試みる
- 二塁に滑り込んだ走者(ビヤヌエバ)は両腕を広げセーフアピールをしながら立ち上がる
- 二塁手の糸原と重なる格好となり、一塁への送球は悪送球に
- ボールは一塁側ベンチへ飛び込む
- 審判協議を始める
- 矢野監督も出る 守備妨害、リプレー検証は無いのか等の確認
- 審判「守備妨害についての協議ではない」
- 矢野監督帰る
- セカンドのプレーについてはセーフ、一塁側ベンチに送球が飛び込みボールデッドになったことでランナー進塁。一点入る
- 試合終了後、阪神は意見書を提出
意見書の内容と返答
試合後、阪神側から出された意見書の内容は、主に以下の二点だった様です。
- スライディングそのものについて(守備妨害ではないのか?)
- リプレー検証が行われなかった事について
そしてこれに対する返答は
- 併殺を試みる守備側を妨害する走塁についてもリクエストの対象
阪神側は「今後は受け付けてもらえるということがわかった。これで収めようと思う」と話し終結しています。
今回のポイント
今回のケースは、守備妨害か否かという点を無視し制度そのものの問題点のみに注目する場合、同日に起こった【よそ見】に比べ、幾分シンプルなケースでしょう。

日刊スポーツの出した「守備妨害もリクエスト対象」という見出し、そこで紹介された阪神側の反応、更にまとめサイトへと転用される過程で「守備妨害もリクエストの範囲内に変更します」と改変され少々混乱を生みましたが……
実際は、記事中に書かれているように「併殺を試みる守備側を妨害する走塁についてもリクエストの対象」との回答で、ルール運用が変更されたわけでも無く、シーズン前に説明されたルールの確認です。
そもそも、何かしら変更が行われるのであれば12球団を集めてのアグリーメント見直し、そこまで行かずとも説明が必要となります。(16年のコリジョンルールではシーズン途中にそういった形での見直しが行われています)
要は「リクエスト対象」ですからリクエストして下さいと前回も紹介した高木豊氏のYoutube(以下の動画)そのままの回答と読み取れます。
その上で、今回気になったポイントを上げるとすれば、以下の2つです。
- 先に審判協議に入っている為、リクエストタイミングが微妙
- 複雑なケースでは何に対してのリクエストかしっかりとした意思疎通が必要で、ジェスチャー一つで全てが済むとは考えにくい
【1】先に審判協議に入った場合のリクエスト
今回のケースに限って言えば、そもそもリプレー対象か否かをチーム側で正確に把握できていなかった部分があった為それ以前の話ではありますが、今後の事を考えれば重要なポイントでしょう。
以前の記事で紹介したように、抗議後のリクエストは認められておらず、基本は当該プレーの後すぐにベンチ内から監督が四角を作るジェスチャーでリクエスト要求をしています。
ですが、先に審判団が協議を始めてしまうとタイミングを逸してしまい、さらに協議内容を確認しなければリクエスト要求が出しにくいことも確かです。
あの試合だけを見れば、矢野監督が審判団に確認をした際にリプレー検証は無いのかどうかも確認した様なので、そこでリクエストを促してしまえばよかった気もするのですが、他の例を見るとそうとも言えません。
同日に起こった【よそ見】では、審判団が促したことでな良い方向に決着がついていますが、昨年起こったホームラン誤審、事件簿3で紹介する予定の【オーバーラン事件】では審判がリクエストを促したことで更なる混乱を生んでいます。
となると、やはり審判側から促すのは好ましくなく、ルールの周知徹底と何かあればまずはリクエスト要求を試してみるという形が、現状チームにとっては最適解となりそうです。
もし、リクエスト要求が不可能なケースであれば、拒否されるわけですから、その後に抗議に移れば出来る限りの手は打てたと考えていいのではないでしょうか。
【2】複雑なケースでのリクエスト
導入当初は単純なアウトセーフくらいしか対象とならなかったリクエスト制度ですが、今後は少しずつその適用範囲が拡がることが予想されます。
そうなれば、今回のようにいくつかのプレーが重なった中でのリクエスト要求も増えてくるでしょう。
その際、どの部分に対してのリクエストなのか、それをどのようにして審判とチームで意思疎通を図っていくのかという部分は今後の課題となりそうです。
リクエスト導入の目的の一つに、時間短縮という目的もあったはずですから中々難しい課題ですが、無用な混乱を産まないために多少時間がかかる形であったとしても十分な意思疎通をはかれる制度となる様、期待したいと思います。
《併殺崩し》事件まとめ
さて、それでは最後に簡単なまとめです。
繰り返しになりますが、このケースは極シンプルなケースでありました。
(あれが守備妨害か否かという部分を除いてですが)
根底にあるのは単純なルール誤認です。恐らく、昨年までは併殺崩しに関するリプレー検証は審判権限に依るものだったこと、守備妨害はリプレー検証の対象外であることなどルールの把握の妨げとなったのではないでしょうか?
誤認と言っても阪神側を揶揄しているわけはなく、野球規約、アグリーメントの全てを監督・コーチ・選手が把握しているかと言えばそうでも無いのが現実です。
勿論、ルールの把握は大事です……が、非常に膨大な量ですから、それを運用することがメインである審判でない限りどうしても溢れる部分は出てきます。
それがまだ導入間もない、手探り状態の制度であれば尚更でしょう。
幸い、コリジョンルールなどと違い、プレーに直接の影響は及ぼしませんし、何かあったらとにかくリクエスト要求してしまえばいい。対象外なら拒否される。そこを把握して判断するのは審判に任せてしまおうと……
今の所、それくらいのスタンスでいいのではないかな?と個人的には感じています。
コメント