今年のホークスはオフのFA戦線に破れ、ドラフト加入のみの新戦力補強となっていたのだが……シーズン途中にとんでもない補強を見せつけられた。
昨年MLBドラフトでブレーブスから1巡目(全体8位)を受けたカーター・スチュワートの獲得だ。
ソフトバンクは25日、カーター・スチュワート・ジュニア投手(19=東フロリダ州立短大)と契約合意したと発表した。
代理人のスコット・ボラス氏の米ロサンゼルスにある事務所で30日(日本時間31日)に会見を行う。その後来日して、6月3日に福岡市内で入団会見に臨む。(全文はリンクで)
【日刊スポーツ】
カーター・スチュワートは昨年の指名後、メディカルチェックで手首の不安を指摘される。それにより契約金提示額が下がり、合意に至らなかったが、今年のドラフトで再び1-2巡目での指名が予想されていた。
今回は、そんな海の向こうの金の卵が、なぜNPBのソフトバンクホークス入りを決めたのか?を簡単にまとめていく。
カーター・スチュワート (Carter Stewart) 基本情報
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守 | 投/打 | 歳(生年月日) | 身長/体重 | 所属 |
投 | 右/右 | 23歳(1999/11/02) | 198cm/91kg | 短大(米) |
カーター・スチュワート (Carter Stewart)プレーと特徴
SBが超有望株のカーター•スチュアート(19)と契約合意。
身長198cmの長身右腕。
常時148-151・最速158㌔の速球。
平均130㌔前後・平均スピンレート常時3200rpm以上の”パワーカーブ”の評価が極めて高く、現時点でもMLBのカーブではトップクラスとの評価。チェンジアップは時折腕が下がるなど発展途上。 pic.twitter.com/n1Hup1JOsP— NPB外国人選手好きのtweet (@CPMMAF) May 21, 2019
アマチュア選手の為、正直どうこうと言うほど情報が探せず、特徴や動画についてはNPB外国人選手好きさんのツイートを引用。
さすがにドラフト上位候補。プロのレベルでやってみてどうかという点は未知数にしろ、現時点でのカタログスペックは魅力大。
契約合意までの経緯
- 18年MLBドラフトでブレーブスに1巡目指名(全体8位)を受ける
- 指名後のメディカルチェックで手首の不安を指摘され、契約金の提示が大幅ダウン(約4M$→2M$以下)
- 合意に至らず、東フロリダ州立短大へ
- 代理人(ボラス氏)と共に即FAとなる道を探るも見つからず
- 19年のドラフト候補としてはベースボールアメリカで38番目の評価
- 予想されるドラフト順位は2巡目以降で、契約金は約1.6M$~2M$
- ドラフト直前、19年5月25日にNPB・ソフトバンクホークスが契約合意を発表(報道では6年総額7M$)
- 5月31日に入団会見を行い、6月3日に入団会見に臨む予定
今後のシナリオは?いつまで日本に?
大前提として、なぜ日本に来るのかと言えば、そちらの方が価値を最大限に活かせる選択だからと考えていいだろう。
ESPNのパッサン記者は、このままドラフトにかかり契約しても6年で4M$程度、しかしホークスであれば6年7M$。さらにFA選手としての大型契約にも早期にたどり着ける可能性があるかもしれない、、
と、そんな思惑があると語っている。というか確実にあるだろう。
では、日本は腰掛けで、すぐにいなくなってしまうのか?と言えばそんな事も無さそうだ。
(恐らく)6年は日本に?
結論から言えば、少なくとも報道されている契約年数の6年間は、日本でプレーすることが濃厚。
なぜかと言えば、スチュワートが将来的にMLBでプレーするために取れる選択肢が以下の3つのどれかであるからだ。
- MLBドラフトに再度かかる
- NPB移籍後、ポスティングシステムを利用
- 国際FA選手となる
①の選択肢では振り出しに戻ってしまうので、狙うとすれば②③の選択肢となる。
しかし、②③にも色々と制限があり、その辺の細かいことを一つ一つ見ていこう。
※システムが複雑で、もしかしたら間違いがあるかもしれないが、調べられた範囲で一つずつ解説
1.MLBドラフトにかかる
米国籍選手であっても度々アマチュアFAとして〇〇と契約~なんて話がある為、私も完全に誤認していたのだが、海外での経験にかかわらず、メジャーまたはマイナーでの契約を結んだことの無い全ての米国及びカナダの市民はMLBアマチュアドラフトの対象となる。
I was told by three agents, including Scott Boras, in December, that U.S. citizens cannot enter MLB except through the draft, but the rules available to the public say “unless they are residents of foreign countries.” So at some point, Stewart would need to establish residence. https://t.co/RpiqQAx6fs
— Jim Allen (@JballAllen) May 22, 2019
共同通信の野球記者ジム・アレン氏は、ボラス氏含む3人の代理人から米国市民はドラフト以外ではMLBに入ることができないと聞いたとツイートしている。正直、全てを理解することは出来ていないのだが、少なくともアマチュアFA権利はドラフトの先に有り、そこに強いメリットは無いと考えていいようだ。
が、続けて「彼らが外国の居住者ではない限り」と続けており、簡単に言えば抜け道的な物が次の2-3である。
2.ポスティングシステムを利用
MLBとNPBの間で結ばれているポスティングシステムは、NPB所属の選手であれば利用可能。
つまり、米国籍のスチュワートであっても利用可能ということになる。
だが、3年目4年目での早期移籍が可能かと言えば否。これにはMLBの労使協定(CBA)が絡んでいる。
いわゆる25歳ルールと呼ばれるもので、【6年以上の在籍かつ25歳以上】を満たしていない選手には様々な制限がかかる。それでも大谷翔平の様に旅立つ選手もいるが、スチュワートが日本に来る経緯を考えれば、6年以下での利用は考えられない。

少し詳しい人であれば、あれ?それは海外選手への規制では……?と思うかもしれないが、国内選手と仮定すればそもそも①のドラフト云々が絡んでくる。
もし、それを主張すれば藪蛇だ。
3.国際FA選手となる
最後に国際FA選手。
MLBでは25歳以上かつメジャーリーグで認定されたリーグに6年間の在籍をした場合、その選手は国際FA選手と見なされる(契約上フリーであれば)。
この規定が、どこまでアマチュアドラフトの要件に優先されるのかは定かで無いのだが、6年という契約期間やボラス氏の発言などを総合すると、国際FA選手としていけるとの判断がありそうだ。
カーター・スチュワート (Carter Stewart)まとめ
さて、ここまでの話を総合すると、描かれた未来図はおそらく③の国際FA選手としての凱旋だろう。
6年契約を満了し、球団の持つ保留権を外してもらって国際FA選手としてMLB球団と交渉する。保険で②のポスティングも考慮とそんな感じだろうか?
ルールが複雑で解釈が分かれる部分も多々あるようで、ボラス氏のゲームに乗せられている気がしなくもないが、なんとなく勝算はあるんだろうと勝手に想像してしまう。
勿論、球団としては6年後も積極的に手放すつもりは無いと報道されているし、そちらへの期待もある。
また、懸念されるMLBに正面切って喧嘩売って平気?という部分だが、MLBファンや記者の反応は概ね現行のルールに対する不満や改善を求める声が多く、全面戦争じゃ!とまでの反応は少ない様に見えた。といっても球団や選手会の反応はまた違うと予想されるし、ポスティングにしろCBAにしろ現行の物は2021年までが期限となっているため、そこで今回のケースを考慮した見直しがされることは避けられないだろう。
それによりどんな影響が有るのかは想像もつかず、カウンタールールとまではいかずとも、ある程度面倒な話、例えば不要論の根強いポスティングルールの廃止くらいは覚悟する必要がありそうだ。
しかし、個人的には日米の選手獲得ルールについては一度根本から見直す必要があると以前から感じていたこともあって、一石を投じるどころかとんでもない爆弾を投げ込んだソフトバンクホークスの行動力には称賛を送りたい。
そして、カーター・スチュワートには、日米プロ野球の新しい道を切り開く、そんな活躍を見せてほしいと思っている。
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