【プロ野球】クライマックスシリーズ進化論! 廃止か変化か

今日からクライマックスシリーズが始まっていると言うのに、自分はなぜこんなものを書いているのか……我ながらとても違和感を覚えるのだが、一度書き出してしまったからには最後まで書き抜こう。

CSを見ながらCSについて考えるのも中々に乙なもの……

 

前回書いたように、ポストシーズンはそろそろ見直すべき時期に来た。

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確かにクライマックスシリーズ(以下:CS)導入による成果は大きく、必要かそうでないかで見れば「必要」という意見が大多数を占めるだろう。
しかし、2007年にCSが導入されてから今年までで5回、3位チームが勝率5割を切ってしまった。そのような状況を鑑みれば、それに応じた見直し、改革は必要だ。

では、どう変化するのがベストだろうか?

今回はポストシーズン、つまりは現在のクライマックスシリーズ(以下CS)の見直しについて考えていきたいと思う。

 

【セ・パ年度別クライマックスシリーズ突破順位について、一部間違いがございましたので修正しました】

クライマックスシリーズの細かい見直しか廃止か

スポーツ紙をはじめとするメディア、有識者、SNS などの野球ファンの意見は

  • クライマックスシリーズについて細かい見直しが必要
  • クライマックスシリーズ廃止

大きく分ければこの二つ。

 

このままでいいと言う声はあまりない。

まぁ個人でも声をあげやすくなった最近は、現状に満足している人の声と言うのは小さくなりがちであるから、一概には言えないのだが、現在の制度で不都合な部分が目立ってきたのは事実であろう。

 

また、CSの廃止に関しては始まったときから一定数同様の声が上がっていたことを考えると見直し派がここ数年で増加したとも言える。

廃止ではなく、あくまでも見直しの声が増えるということは、それくらいCSの恩恵を皆が感じており、無くすのは考えられないというのが多くの見方ということだろう。

CS見直しの具体案

では、見直し意見の中身を見ていきたいと思う。

その殆どが、主に順位によって与えられるアドバンテージへの意見だ。

CSの細かいレギュレーションについては、各自で確認してもらうとして、現在与えられているアドバンテージについては以下のようなものとなっている。

  • 上位チームのホーム球場で試合が行える
  • ファイナルステージでは優勝チームに1勝が与えられる
  • ファーストステージからファイナルへと続く日程は中1日(2戦で終わった場合2日)となっており、そのタイトなスケジュール自体が優勝チームのアドバンテージとなっている

このアドバンテージについて、もう少しシーズン結果を反映できないか?ということだ。

 

具体体的には、ゲーム差によるアドバンテージの追加や勝率による足切り
つまり、昨年ブッチギリで優勝した広島やSBには1勝とは言わず2勝3勝といったアドバンテージを与える、今年の巨人や13年広島のような成績であれば、ファーストステージをすっ飛ばす……と、そういう案である。

実はバランスが取れている現在のCS制度

さて、一見妥当な案に思えるこれらの意見だが、実のところそうとも言い切れない。以下の表を見て欲しい。

セ・パ年度別クライマックスシリーズ突破順位

年度セ・リーグパ・リーグ
20042位
20052位
20061位
20072位1位
20081位1位
20091位1位
20101位3位
20111位1位
20121位1位
20131位1位
20142位1位
20151位1位
20161位1位
20173位1位

これは、それぞれのリーグでCSを突破したチームのシーズン順位を表にしたものになる。

セ・パ両リーグ合わせて25回行われたCSにおいて優勝チームが日本シリーズに進んだ回数は19回、確率にして約8割(76%)だ。

 

ゲーム差だとか勝率だとかそういった物を一旦脇に置いてしまえば、優勝チームの進出率が8割というのは絶妙なラインではないだろうか?
一方のリーグで考えれば4年無いし5年に1度、優勝チーム以外が切符を手にする。これ以上低ければシーズンは何だったのかという話になり、低ければ興味を惹かれない。そんなラインを攻めた制度となっている。

 

ここに手を加えて、より良いCSにできるかと言えば……どうだろう?個人的には相当厳しい話に思える。

崩していけないのは優勝チームの圧倒的な優位性

恐らく、どこに焦点を当ててCSを考えるのかで見え方は随分と変わる。
だが、大前提として「優勝チームの優位性」は確保されるべきだ。

その視点で見れば、今のCSは非常にバランスがとれている。

 

その上で2位と3位でバランスがとれていないという視点を加えたとしよう。
実際、優勝チームの視点で見れば明確な差が見て取れるが、2位にアドバンテージはほぼ無いのが現状だ。日本シリーズに3位が進んだ回数は2回、2位は4回ではあるのだが、勝敗数で言えば2位が30勝34敗1分と負け越している。

 

そう考えると、優勝チームの優位性を維持、または更に厚くして2位3位にも差をつけることも考えとしては間違っていない。
それにブッチギリで優勝したチームであっても、8割の突破率では低すぎると考える人もいるだろう。

 

ここで大事になってくるのは、あくまでもこれまでと同程度の優勝チームの優位性は維持したまま2位3位に差をつけるということである。
しかし、アドバンテージの見直しを図った場合、厚くしたはずのアドバンテージが逆に薄くなる可能性も考えられないだろうか?

 

例えば勝率なりゲーム差なりでCSファーストステージがなくなった場合。
この時点で、優勝チームには日程によるアドバンテージが消える。
その上、1位と2位の差が無かった場合、または1勝のアドバンテージが2勝になる程度だった場合。
優勝チームはこれまでより厳しいCSを強いられる可能性は無いだろうか?

また、逆に優勝チームの独走によりCSそのものが無くなる、または1勝で終わるなんて状況になったとしよう。
その場合、今度は日本シリーズでセ・パの公平性が保てるだろうか?という話になってくる。

 

さらに、セ・パの公平性で言えば交流戦による影響も忘れてはいけない。
特にセ・リーグは交流戦の負け越しが響き、負け越しでの三位チームという状況が多く生まれている。
仮に勝率でのアドバンテージ見直しをした場合、交流戦で奮闘したリーグの恩恵を反対のリーグ優勝チームが受けることになりかねない。

 

つまり、CSは思っている以上に微妙なバランスの上で成り立っている。ポストシーズンでシラケる要素を排除しようとして、逆に別のシラケる要素を量産してしまう危険性は考慮しなければならないだろう。

小さな変化ではなく大きなビジョンを

細かいことを言い出せばキリがない。
確かにそうだろう。

そんな事言ってるから改革が進まない。
そのとおりだ。

 

が、CSに関しては完成したトーナメントであり、ここに手を加える余地は殆ど無い。

結局、12球団の半数が出場できてしまう現在のポストシーズン構造に無理がある。

最も単純な解決策は、球団数を増やすこと。これに尽きる。
当然、一朝一夕で実現するものではないから、その間目先を変えながらあの手この手でポストシーズンを維持する必要はある。それには先に挙げたルールの細かい変更も有効だろう。

 

国内で球団数が増やせないのであれば、韓国KBOや台湾CPBLなんかも巻き込んで日本一ではなくアジア一を決定するポストシーズンを作るのもいいかもしれない。
それなら、セ・パの2位まで、優勝チーム以外の勝率で上から3チームみたいなプレーオフだって可能となり、選択肢は格段に増える。

 

CSによってファンの楽しみが増え、観客動員も増えた。

しかし、球界全体としてそこに甘んじ止まってはいけない。

目先の数年を考えればそれでいいかもしれないが、10年20年と長いスパンで見た場合、時代・状況に合わせた変化、大局的なビジョンをもつことが必要ではないだろうか。

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