さて、ゲレーロ2番を検討する後編。
先日の前編では、現在の日本野球は、既に2番最強説までいかないまでも攻撃的2番打者という形は、定着し始めているという所で終わった。
つまり、長距離砲の不足から4番を打てるような打者を2番に配置することはなくとも、OPSが高い打者を配置して送らずに攻めるという形それ自体は取り入れているのだ。
それを2番最強説という響きのイメージがファンの理解を阻害しているのである。
であれば、チーム編成が許すのであれば一つのオプションとして長距離砲を配置したっていいじゃない、とそんな前提を作った上での今回の後編だ。
《 巨人の2番!吉川尚輝 》現在の状況は?
巨人は開幕から2番を2年目の吉川尚樹に任せている。
足が早く左打ち、確かに従来の1-2番のイメージそのものだ。
だが、果たして吉川は本当に二番に向いているのか?と言えばそうでもない。
いや、正確には吉川を二番に置くチームの狙いがイマイチわからないと言うべきだろうか?
【吉川尚輝】ここまでの成績
出塁率 | 長打率 | OPS | 三振 | 四球 | |
吉川尚輝 | 0.273 | 0.355 | 0.628 | 18 | 2 |
BB% | K% | BB/K | 併殺打 | 犠打 | |
吉川尚輝 | 3% | 29% | 0.10 | 1 | 1 |
※BB% 四球率 K% 三振率
表を見て分かるように今の所、犠打1回、ソレ以外は実に平凡な記録だ。
足が早く、左打ちということで併殺打こそ期待通り少ないのだろうが、上位に置くにしては少々寂しい数字である。
キャンプを見る限り、打球の伸びも良く、期待値が高いのは間違いないが、現状で自由に打たせて好結果を期待できるかと言えば疑問が残る。
従来の送る2番であるのならまだしも、強打でいく2番には厳しいと言わざるを得ない。
2番左打ちの価値
2番左打ちには、先頭が1塁へと出塁することを前提とした場合、いくつかのメリットがある。
2. 捕手がセカンド送球する際、障害となる
3. 一塁到達速度が早くなる為、併殺を防げる
4. 編成が右に偏る巨人では、クリーンナップ前のアクセントになる
このように、好結果を期待できる確率が若干上がるのである。
だが、あくまで同レベルの右打者に比べて上がるだけであり、実力の壁を超えるほどの効果は無い。
ましてや現状3割に届くかという吉川尚の三振率では、このほとんどのメリットは活かせない。
確かに左であるという他にも、吉川尚の足は魅力的だ。
併殺の危険性は格段に下がるし、クリーンナップの長打があれば1塁からでもホームまで走れるかもしれない。
しかし、それもこれも出塁してこその話であり、厳しいことを言えば現状ではマイナスにならないだけの二番でしか無い。
せめて現在40%に近いボールゾーンのスイング率が30%を切るくらいまでに成長し、四球率の上昇と三振率の減少を達成してからでなければ強打の2番は厳しい。
吉川尚に強打の2番はまだ早い
別に吉川尚が悪いわけではない。
二年目の選手では当然の数字であるし、単純に強打の2番にはまだ早いとそれだけの話だ。
ここからボールの取捨選択をできるようになるでも、ロッテ・角中やDe・宮崎のような変態的なバットコントロールを身につけるでも何らかの技術を身に着け、一流と言われる打者になっていけばいい。
それでも現時点でチームが吉川を二番に置くというのであれば、何かしらの狙いをしっかりと示してやらなければいけないだろう。まさかイメージだけで2番に置いているわけではないだろうが、まだまだ足りない技術が山積している吉川尚に、自由に打ってこいとはあまりにも無茶な話である。
巨人は何がしたいのか
結局、犠打を指示しないのにも関わらず、犠打の選択肢が捨てられないのだ。
どうせ使わないのなら開き直ってしまえば良さそうな気もするが、気分的に、なんとなく、古いイメージを守ってしまっているのである。
足も早いし、エンドランも仕掛けられるなんて狙いもあるのかもしれないが、現状三振がこれだけ多い選手にエンドランの指示など実際には出せないだろう。
机上での計算と現実的な現場での扱いに大きな溝があるために、その価値を全く活かせていないのである。
言葉にすればなんとも滑稽な話ではあるが、その気持はわからなくもない
イメージというのは思いの外、根深いものがある。どれだけ2番は送らず打たせるという作戦が定着したとしても、完全に捨てる程は思いきれないものなのだ。まぁ人のやることなどそんなもんである。
だからこそ、私は2番・ゲレーロを提言したい。
【2番・ゲレーロ】の可能性
別に楽天が昨年「ペゲーロ」でいったから「ゲレーロ」でもいいじゃない!なんて話ではない。◯―ロ三兄弟ならイケるんじゃないか等とは考えていない。
何度も言うが、2番が強打で臨むという考え方そのものは、NPBにも定着し始めている。
実際、巨人もその考え方だけは、無駄に実践しているのだ。
でなければ、今の吉川尚の成績で犠打が1というのは、あまりにも少ない。
それがどう働いてどんな意味があるのかを理解しているとは思えない程、無駄に実践している。
岡本の覚醒によりクリーンナップに余裕が生まれた
現在、岡本の期待以上の活躍で巨人はクリーンナップを打てる選手が4人揃った。
6番以降の打者よりも期待値が高く、かつ中距離までであればそれなりに狙える打者が揃ったのだ。
であれば、強打の考え方だけでなく、2番にパワーヒッターを配置するのも実現可能である。
陽岱鋼の離脱もあって繰り上がった岡本ではあるが、仮に陽岱鋼が復帰した場合でも5番が打てそうなほどに充実している。
つまり、仮にゲレーロを2番に配置したとしても最低限のクリーンナップは維持できる。
その場合、坂本を3番に戻すことが前提となるので1番をどうするかという問題に立ち戻るわけだが、それは一度置いておこう。
ともかく現在の巨人ではゲレーロの2番は「やろうとすればできる」のだ。
ゲレーロここまでの成績
出塁率 | 長打率 | OPS | 三振 | 四球 | |
2017 | 0.333 | 0.563 | 0.896 | 98 | 24 |
2018 | 0.409 | 0.389 | 0.798 | 6 | 12 |
BB% | K% | BB/K | 併殺打 | 犠打 | |
2017 | 4.7% | 19% | 0.24 | 13 | 0 |
2018 | 18.2% | 11% | 1.64 | 0 | 0 |
先日、やっと本塁打が出たゲレーロであるが、ここまで何かと槍玉に挙げられている。
確かにホームラン1本、打点3というのは少し寂しくもあるが、全体をみればそれ程悪くないように思える。打撃は水物、ホームランも波に乗れば打ち始めるだろうと考えれば、他の部分はむしろ昨年よりも成長している。
とは言っても、その期待値の大きさから多少の成績じゃ認めてはもらえないのも致し方ないところではあるかもしれないし、高額助っ人の宿命と言えばそれまでかもしれない。
ゲレーロに2番が務まる理由
強打の2番に最低限求められる物は何かと言えば、併殺打が増えすぎないことであると思う。
いくらOPSが高い選手を詰めていった所で、併殺が増えてしまえば得点力は下がってしまう。
ゲレーロはプルヒッターであり、広角に飛ばす技術には乏しく、足も早くない。だが、元々フライアウトが多い選手のためか、併殺打は昨年もそれ程多くない。
つまり、送る2番としては考えられないが、強打の2番であれば十分機能するのだ。
また、今年は日本野球に慣れてきたのか、本塁打こそ出てないものの出塁率は上がり、三振率は下がっている。なにより昨年38.8%だったボールゾーンのスイング率が、今年はここまで27.3%と劇的に改善している。波に乗って長打が出始めれば、そのOPSは昨年よりも高くなるはずだ。
まぁ単純にマークが厳しくなって勝負を避けられているだけという可能性も捨てきれないが……それは置いておこう。
プライドがなんて話になるかもしれないが、MLBではそれこそジャッジが2番を打っている。過去にはAロッドだって2番に入ったことがあった。むしろクリーンナップにこだわりを持つのは日本人だけであるかもしれない。
最後にもう一つ。オカルト的な話になるのだが、ゲレーロは一部で「ソローロ」などと呼ばれるほどにランナーを置いて結果が出なかった。
であれば、それこそ2番でいいではないか。できない部分にスポットライトを当てる必要など無いのだ。最低限の能力か、それをカバーする能力さえあれば、後は長所を伸ばせば良いのである。
ソロしか打てないのなら尚の事、沢山打席の回ってくる2番に置くべきだ。
初回に回ってくる2番でソロホームランを放てばとりあえず先取点は取れるのである。先取率が2割を切ってる現状を変えなければ先は無いのだ。
勿論、2018ここまでの数字が偶々で、ここから三振かHRかなんて去年と同じゲレーロになったとすれば2番は向かないであろう。
だが、NPBに対応し始めたのであれば、ゲレーロ2番を一つのオプションとして試してみるのは有りではないだろうか?
☆参考サイト☆
・スポナビ https://sports.yahoo.co.jp/
・データで楽しむプロ野球 http://baseballdata.jp/
・1.02 ESSENCE of BASEBALL http://1point02.jp/op/index.aspx
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